“コミュニケーション能力”は企業の人材評価でもかなり上位にある評価基準であるが、その一方で、多くの人が現在進行形で苦労している能力だと思う。
実際に、書店に並ぶ“コミュニケーション”関連のHowTo本の多さは、このことを示している。
“コミュニケーション能力”とは、おそらく以下の能力に分割できる。
【自分から相手へのコミュニケーション】
・対象について考えることができる
・対象についてある種の結論を導くことができる
・自分の結論を言語表現することができる
・言語表現化された考えを相手に伝えることができる
【相手から自分へのコミュニケーション】
・相手の発言を聞くことができる
・相手の発言を解釈することができる
・相手の発言をある種のイメージとして自分の頭に描くことができる
コミュニケーション能力は、緊張しないとか、相手の目を見るとか、初対面の相手との会話のきっかけの作り方など・・・確かにこれらは重要ではある・・・が訓練すべきものとして意識されている。
しかし、そもそも“言語表現化する能力の不足”でミスコミュニケーションが発生しているように思うことが多い。
多くの場合、“話せない”ことではなく“話した内容が分からない”ことでミスコミュニケーションが生じるからだ。
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まず、“思っていること”と、それを“表現したこと”は一致することがない、ということを意識すべきだ。
(こうなるのは奇跡的)
思ったことをそのまま端的に表現することを突き詰めると、歌人か俳人になる。普通のビジネスマンには不可能である。
どんなに頑張っても“思っていること”と“表現したこと”は食い違っている、ということを認めよう。(しかも、それを“解釈”する相手の頭の中で出来上がるイメージも当然食い違っている。しかし、相手のことを責めるより自分を改善すべきである。)
結論から言うと、ミスコミュニケーションの一番の要因は、“思っていること”と“表現したこと”が下図のような関係になってしまった場合だ。
相手からすると「聞いたはずのことが、実は違うらしい」と「実はまだ聞いていないことがある」とが両方存在するので、まさに「お前は何を言っているのだ?」となる。
仮に、“思っていること”と“表現したこと”がほとんど重なっていなければ(これは相当なひどい発言者であるが)、聞いた方も違和感を覚えて修正が可能だ。
しかし、“思っていること”と“表現したこと”がほとんど重なっている場合が、実は厄介である。
受託プロジェクトの多くがこれに引っかかる。プロジェクトの開始当初は、“大体の線で理解する”ので、“重なり部分”で理解し合えた気になる。しかし、実運用が迫ってくると、“食い違い部分”が目についてくる。これは当然で、システムというものは、“運用のエッジ”が非常に重要だからだ。
・「それは聞いていない」→「言わなくても当然でしょ」
・「そう言ったでしょ」→「その意味で言ったのではない」
というテンプレ化されたやり取りは、それぞれ2か所の食い違いに該当するのは一目瞭然である。
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さて、そこで本題である。
「“思ったこと”をそのまま“表現する”ことはできない」を認めた上で、何をすべきか?ということである。
それは、自分が何かを説明するときに、次の3つのどれかを明確に意識することである。
1.対象を完全に含んで、それよりも大きく説明する
2.対象の中の一部分を明確に抜き出して説明する
3.対象とはまったく交わらないものを説明する
これらに共通しているのは、“思っていること”と“交差しない”ということだ。
“思っていること”をJUSTに表現することは非常に困難だが、交差させないということは簡単である。
実は、聞いた相手も“交差”には敏感なので、“交差しない表現”は誤解が少ない。
相手に説明するとは、上記の3パターンを繰り返すことである。
例えば、以下である。
1.対象よりも大きな枠で伝える
2.具体例として、対象の中の一部分を伝える
3.大きな枠の一部を、“これは違う”という枠で削る
4.1から3を繰り返す
これで、“思っていること”のエッジが浮き彫りになっていく。
重要なのは、“交差させる表現を絶対にしない”ということを意識することである。
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